今年度も6回に渡り夜間レクチャーシリーズが開催されます。このレクチャーシリーズでは、毎年様々な分野で活躍されているゲストをお呼びして、前半にゲストによるレクチャー、後半はゲストを囲んでの座談会を行っております。
今年度初回のゲストは、デザイナーの森豪男さんでした。当日は、森さんと長い間仕事のお付き合いのある建築家で、本校非常勤講師の伊藤寛先生も参加して頂き、お二人の対談のような形で進められました。
森さんは、武蔵美術大学で教鞭を取っていた向井良吉氏((株)七彩工芸の設立者)の元で学び、大きな影響を受け、卒業後は向井良吉の会社で10年近く働き、その間に向井良吉氏のところに集まってきた色々なデザイナー(写真家の大辻清司氏など)にも大きな影響を受けたそうです。
レクチャーでは、森さんからの希望で、作品を見せる前に余計な先入観を与えたくないということで、最初に森さんの作品を10分間のスライドと約40分間の映像で、説明なしで上映して頂きました。
その後、伊藤先生との対談という形で話が始まり、伊藤先生からは、森さんの作品における「芸術とデザイン」との関係などについて質問がありました。森さんからは「家具は、彫刻と違い、触れることができる芸術である」など、芸施とデザインの関係についてお話し頂きました。また、ご自身のデザインを、「生活のためだけでなく、オマージュであり、例えば、読んだ本に興味が湧くと、その本だけを入れたい本棚を作りたくなる」とご説明頂きました。そして、(機能から形を作るのではなく)人間の感情から形を作ることを優先しており、出会った色々な人、見た映画などあらゆるものから影響をうけているとも仰い、誰しも何かの影響を受けて作品をつくっており、作品のオリジナリティーなどなく、あらゆるものを美しいと感じ、影響を受けることが大切だとお話し頂きました。お話しの途中では、上映した映像作品の映像作家さんもご登壇頂き、短い時間でしたが非常に密度の高い回となりました。
森豪男/1940年福島県に生まれ、1962年に武蔵野美術学校芸能デザイン専攻を卒業。学生時代に、生涯の師となる造形作家向井良吉氏(本学名誉教授)との出会いが、その後のデザイナーとしての方向性に大きな影響を与えた。卒業後は向井氏の主宰する「七彩工芸」(現「七彩」)に入社し、同社に集う彫刻家や画家、陶芸家、デザイナーなど多領域の作家達との切磋琢磨のなかで研鑽を積み、1978年にはデザインスタジオ「MORI」を開設して、今日に至るまで先端のデザイナーとして、また教育者として幅広い活動を続けている。
代表作として、1977年の「ランブリング・ホーム」、1982年の建築家境沢孝氏を中心としたデザイン運動「ポエ・フォルム」、1991年の「海の色彩を持つキャビネット」、1997年の「森豪男の杉の家具」など。