KDS-SD 桑沢デザイン研究所
スペースデザイン

Lecture Seriesレクチャーシリーズ

2020年度夜間レクチャーシリーズ報告_第1回ゲスト:森山茜さん

昨年度(2020年度)後期に行われた夜間レクチャーシリーズの報告を長らく出来ていませんでしたので、6回に渡り、その内容をご報告させて頂きます。

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レクチャーシリーズ 第1回(2020.11.14)

森山茜さん(テキスタイルデザイナー)

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森山茜さんはテキスタイルを扱ったインスタレーションや建築家とのコラボレーションを多数手掛けるテキスタイルデザイナーである。京都工芸繊維大学で建築を学び、2010年にデザイナーとして独立。現在はスウェーデンのストックホルムにて活動している。

今年はコロナの影響によりレクチャーシリーズ初のオンラインでの開催となり、森山さんは、ストックホルムにあるアトリエからレクチャーしてくれた。前半は主に森山さんが手がけたプロジェクトをご紹介して頂き、後半は学生からの質問に答える時間が設けられた。

テキスタイルとの出会いは、雑誌で見つけたペトラ・ブレーゼ(テキスタイルデザイナー兼ランドスケープデザイナー)の紹介記事だったという。ペトラ・ブレーゼは、OMAなど世界の建築界をリードする建築家たちと共にテキスタイルデザインをしており、興味を持った森山さんはインターンに行った。そこで建築のためのテキスタイルの面白さに惹かれ、また、ヨーロッパで仕事をすることへの魅力を感じ、大学院を卒業後にストックホルムで2年間テキスタイルを学び、その後独立し、現在に至る。

初めて手がけたプロジェクトは、横幅2メートル、高さが7メートルほどの非常に大きなガラスの窓に合う、カーテンを作って欲しいとの依頼だった。まだテキスタイルの勉強を始めたばかりの頃に、在住していたストックホルムから、京都の住宅のカーテンを作ることとなる。

建築家(中山英之)からの要望は「カーテンはインテリアの一部というより、外壁の一部のような感じで作って欲しい」とのことであった。高さがあるためカーテンレールをつけて動かせず、また天井は傾斜していた。取り付け方や、開け方も普通のやり方では難しい。重力と布の重さでどのような形になるのかは、実際にやってみないとわからないため、原寸でスタディを何度も行い、建築家と相談し試行錯誤をした結果、劇場のカーテンのように、後ろに紐を入れて開閉する方法に落ち着いた。

初めてのカーテンの仕事で、55平米ほどの大きさ、重さが8キロのカーテンをスーツケースに入れてストックホルムから京都まで運んだという。その時、スーツケースに収まるほどに小さくなるが、広げて設置すれば空間がガラッと変わるカーテンの面白さを感じたという。

建築とテキスタイルの両方を学んだ後、テキスタイルの仕事をしていくうちに、それぞれが扱うスケールが全く違うということを改めて考えさせられたと森山さんは言う。テキスタイルは1センチ単位で、建築のようにミリ単位では話せない。布は伸縮し、吊り下げた際に伸びることもあるため、細かな調節というのは不可能に近い。テキスタイルでは通用しない建築での常識。センチメートルとミリメートルをジャンプするような仕事の仕方。そこが面白いところでもあり、難しいところでもあるという。

また、テキスタイルの分野では模型を作る人が少なく、建築を勉強した森山さんは、模型を作って検証するという考えが役に立ったそう。

森山さんは、光の透け方、色の混ざり方、織り方など、毎日サンプルを作り、空間の中で布がどのように反応するのかを日々研究している。作品をつくるときに大事なのは、作ってみたものを空間に実際に置き、どのように反応するのかを実際に目で確かめること。布は光や風で表情が変わるため、実物を見てみない限りはわからないという。日々の研究の中で発見したことを、建築空間などにフィットさせるのが自分の仕事なのだと語った。