KDS-SD 桑沢デザイン研究所
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Lecture Seriesレクチャーシリーズ

2020年度夜間レクチャーシリーズ報告_第6回ゲスト:藤田雄介さん

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レクチャーシリーズ 第6回(2020.01.09)

藤田雄介(建築家)

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藤田雄介さんは現在、住宅の新築・リノベーションの設計を主に行なっており、それと並行して「戸戸(こと)」という建具やその周辺部品の生産流通を行う建具メーカーを運営している建築家である。2005年に日本大学生産工学部建築工学科を卒業し、2007年に東京都市大学大学院工学研究科修士課程を修了。その後2009年まで手塚建築研究所に勤務し、2010年よりCamp Design inc.を主宰している。また、2013年からはICSカレッジオブアーツの非常勤講師もしている。また、藤田さんが手がけた「花畑団地27号棟プロジェクト」では2012年UR団地再生デザインコンペ最優秀賞、グッドデザイン賞など、数多くの賞を受賞している。

はじめに、花畑団地27号棟プロジェクトについて紹介してくれた。築40年以上経っている花畑団地という大きな団地があり、その中の1棟をリノベーションするという設計コンペであった。建物自体はあまり大きく変更できるものではなく、増築を派手派手しく出来るものではなかったため、全く違うアプローチをする必要があると藤田さんは考えた。

戦後の住宅難の時代から団地というものは建てられ、50年近く経っている。現在多くの団地は、リノベーションするか壊すかの選択が迫られる時期を迎えており、団地再生をしていく上で木製のサッシを基調に提案した。

団地というのは日当たりメインで建物が配置されており、エネルギー負荷が少ない配置計画になっている。冬でも日が当たり、暖房を使う時間を減らす利点がある。しかし、窓のサッシはアルミが多く、熱伝導率が高く、その熱を逃すものだった。そこで提案したのが木製のサッシであった。

また、ルームテラスを各部屋に一つ、各階に分散させるように配置することで、これまでの団地とは違い、間取りの均質性をなくした。またそうすることで、断面的にも均質的でなくなった。

住宅設計において共同する職人さんは、普段販売用に建具などを製作してもらう職人さんに関わってもらい、またそれぞれのプロジェクトで新たに開発した建具などは、戸戸を通して流通させる。関係者以外から「こういう風にも使いたい」と思いも寄らない使い方をしてくれることがあり、それがまた設計の新しいアイデアになる。藤田さんはそのようにして円環が描けるのではないかと仰った。

また、最近では伝統技術とのコラボレーションを進めているとのこと。販売はまだだが、取手に漆を塗ってもらったりとか、藍染めをしたりとか。伝統的な技術というのは建築と親和性があり、昔はよく使われていたのだが、量産品によってその存在は廃れつつある。建具から建築と、伝統技術との回路を繋ぎ直せないかと考えているそうだ。

藤田さんは、建具が建築の重要な要素である境界を担っていると考えている。建具は、人と人との関係を繋ぎ、環境的な要素も繋ぎ、手触りなどで空間の雰囲気を変え、空間性を支える要素であるという。その建具を生産・流通させることで、いろいろな場所で使用してもらえることを目指す。そして自分のデザインした建具とその考えが、他の建築家などのプロジェクトでも使用されることで、都市の中に拡散していき、直接的ではないが、様々な場所におけるリノベーションに繋がっていると感じるそうだ。