レクチャーシリーズ第5回目のゲストは、HAGI STUDIO代表の宮崎晃吉氏でした。
宮崎氏は、東京芸術大学大学院で建築を学んだ後、磯崎新アトリエで勤務。その後、東北大震災をきっかけに、東京・谷中の築60年の木賃アパートを改修した「最小文化複合施設」HAGISOを2013年に始め、株式会社HAGI STUDIOを設立した。HAGISOは今では、エールフランスの機内誌でも紹介されるほど海外でも高く評価されている。
宮崎氏は講演の冒頭で、今の世の中を「(物を)もてあます時代」、そして「全て(の価値観)が反転する時代」と話した。今の世の中は物にあふれており、古くなったりして使えなくなったものなどに対し、どのように価値を再生するかという「リノベーション(renovation)」、つまり「re」-「innovation」(もう一度革新を起こす)が試されている世の中だと話す。
また、「Hack the city(街をのっとる)」という考えも話された。街において、今まで繋がりが無かったもの同士を繋ぎ、関係を新たに構築することで、街全体を再構成しようという考えである。これらの考えはまさに、HAGISOで試されたことであり、HAGISOでは、今までhotel(宿泊施設)内に存在していたレストランやバスルームといったものを、街に存在する飲食店や銭湯と共同することで、「街=hotel」として再構成している。
宮崎氏は、自身が影響を受けた広瀬郁氏の著書「建築プロデュース学入門」を紹介しながら、建築家やデザイナーが施主が抱えるお金の面にいかに無頓着かを話し、プロジェクト予算のマネージングも含め、施主と共同作業しながら(時には自分が施主兼デザイナーになり)、プロジェクト自体を成功させることの重要性を様々なHAGI STUDIOでの具体例をもってお話された。
今までのように、ものに価値を付加することで、ものの価値を高めていた「付加価値」の時代から、それを利用する人や街に敢えて負荷をかける「負荷価値」という新たな考え方へ移行していく重要性もお話された。
*次回(1月13日)のレクチャーシリーズは最終回で、建築家の藤野高志(建築家、生物建築舎代表)を予定しております。
生物建築舎
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