KDS-SD 桑沢デザイン研究所
スペースデザイン

Lecture Seriesレクチャーシリーズ

レクチャーシリーズ 第4回 木下壽子氏(住宅遺産トラスト代表)が行われました

レクチャーシリーズ第4回目のゲストは、住宅遺産トラスト理事の木下壽子氏でした。

住宅遺産トラストは、建築だけでなく、不動産や法律などの様々な専門知識を持った専門家が集まり2013年に設立した。国内にはかつて巨匠と言われる建築家が設計した名作住宅が数多く残っているが、経年に伴い劣化したり住み手がいなくなり、最終的には、税金の問題で取り壊されてしまうケースが少なくない。

住宅遺産トラストは、それらの住宅建築を貴重な財産として捉え、その価値を広め、取り壊さずに生きたまま、新たな住まい手へと継承していくことを目指している。

その活動は2008年、吉村順三設計の旧園田高弘邸の継承活動から始まった。建築の価値を広める為に実際に建築を見学できる集いを企画したり、展覧会を行った。初めのうち集まったのは建築関係者がほとんどだったが、活動を続けていくうちにマスメディアにも取り上げられ、一般の人々にまでも広がっていった。そして時間は掛かったものの、最終的に買い手がみつかり、無事継承することができた。

その後もA.レーモンド設計の「富士見の家」や坂本一成設計の「代田の町家」など、幾つかの住宅建築の継承を成功させ、着実に継承活動は続いている。

こういった活動をするにあたり、日本の税制や法律が住宅建築の継承に適していないと感じることが多い。また、意識の面でも日本ではまだまだ歴史的住宅の価値が理解されておらず、改革をしていく必要があるという。イギリスの考え方を例として挙げ、どんどん新築していく日本と違い、イギリスでは住宅は中古であるのが一般的で、古いものの価値が一般的に認められている。そしてイギリスでは、ナショナルトラストやランドマークトラストといった土地や建築を保護したり再利用し継承していく仕組みも整っている。

日本にもイギリスのような、建築を守り生かしていく持続可能な仕組みのデザインが必要とされている。これからデザイナーになる若者は、時代に合わせてモノ以外にも社会の仕組みなどをデザインしていくことが求められている。何事もやってみなければ始まらないので、諦めずにとりあえずやってみることが大切だと木下氏は自身の経験を通して述べられた。

住宅遺産トラスト:
http://hhtrust.jp

*次回12月16日(土)の講演者は、建築家の宮崎晃吉氏(HAGI STUDIO代表)です。会場は6階アトリエ教室になります。

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