KDS-SD 桑沢デザイン研究所
スペースデザイン

Lecture Seriesレクチャーシリーズ

レクチャーシリーズ第6回(最終回)は出前写真家の中道淳さんをお招きしました

中道淳さんは1979年よりナカサアンドパートナーズに在籍している写真家で、主に建築やインテリアの写真を年間で400件以上撮っているそうです。

レクチャー当日は、料理のコック服に岡持ちとメガホンを持って登場し、名前の通り出前を届けに来たような出で立ちで参加者を驚かせていた。

以前怪しい人に見られないために服装を試行錯誤していたところ、この服装を周りから面白いと言われ、さらに依頼が来るようにもなったので、この格好をしているという。

コック服は合羽橋で購入したもので、岡持ちは中目黒の実際に経営している「キッチンパンチ(洋食屋)」から頂いたものらしい。

前半はこれまで中道さんが撮影してきた作品の数々を紹介して頂いた。中道さんは写真を撮る際に、その写真を見る人が「ここで食べたい、ここに行きたい」と思わせる雰囲気や空気感、そしてライブ感を伝えることが1番大事だと言う。しかしライブ感といって画面に人を入れてしまうと、空間ではなく人に視線がいってしまうので、MOJA in the HOUSE渋谷(cafe company)の撮影ではそれを前提にして、モノ(カトラリー、ワインなど)だけを置き、あたかも人がいるように見せた。人の存在感を醸しながら、空間の雰囲気を演出しようとした例である。

また、撮影する際はデザイナーが意思(世界観)を持って作った空間であるはずなので、写真家個人としての世界観で撮影するのではなく、デザイナーの意図を出来るだけ純粋に読み解くように心掛けているという。

中道さんは明朗快活で、学生が「人とのコミュニケーションをよくするためには?」と質問をしたところ、「まず相手の名前を聞く、そして名前で呼ぶ」ことが1番のコミュニケーションであると答えた。中道さんは初めて人と話す時、必ず相手の名前を聞くように心掛けているそうで、後半のディスカッションでも、まず質問者の名前を聞いてから、質問を聞いて答えていた。それは、相手と対等な関係で気軽に話せるような雰囲気を作る、重要なコミュニケーションの方法であろう。

また、「相手に100%伝えるには?」という質問には、「カラー写真は情報量が100%に対して、モノクロ写真だと色々想像できるので、情報量が少なかったり、情報が欠けている方が相手にまっすぐ伝わる。コミュニケーションも何かが欠けてたり、間違えている方が相手に愛着が湧き、伝わる」と写真にちなんだ助言をしてくれた。

そしてレクチャーが終わった後も、参加者や学生達と記念撮影会が開かれ、大盛況のレクチャー最終日となった。