KDS-SD 桑沢デザイン研究所
スペースデザイン

Lecture Seriesレクチャーシリーズ

第2回レクチャーシリーズは今和泉隆行氏(地理人)のレクチャーでした

11月26日開催の第2回目のレクチャーシリーズは、空想地図作家として空想都市からあらゆる日常の断片を想像し制作をされる地理人(http://www.chirijin.com)の今和泉隆行氏によるレクチャーでした。

今和泉氏は、7歳の頃から空想地図(実在しない想像上の都市の地図)を作り始め、大学時代には地図デザイン、テレビドラマの地理監修・地図制作にも携わる他、地図を通じた人の営みを読み解き、新たな都市の見方、伝え方を実践されています。また空想地図は現代美術作品として、各地の美術館での展覧会にも出展するなど、幅広い活動をされています。

本レクチャーでは、空想都市に関して空想地図に始まり、より細かな視点で描かれた空想間取り図や商業施設の空想フロアガイド、更には空想マスコット、架空のコンビニやそのロゴデザインの制作などについてお話いただきました。中でも運転免許証や学生証やレシートを空想で作る「空想忘れ物」によって、その町の人々の生活や営みを創造するなど、スケールを変えながら都市を俯瞰する目線についてお話いただきました。

空想というと一見自由なようですが「空想都市」は理想都市ではなく、現実的な都市のシミュレーションであるとのことです。架空コンビニのロゴデザインもパロディ的にやるのではなく、ありそうでないものを制作しているとのことでした。理想のみを追求すると現実とは剥離してしまうため、うまくいかないことも含めた日常を空想することこそ愛おしいとのことです。日常生活で見聞きしたものを先入観なくニュートラルに観察し、そこから得た情報を元に発想していくという姿勢は、デザインには非常に大切なことです。

後半のディスカッションでは、どのくらいの範囲まで空想都市を想像しているのか、架空の都市をどのように設定して整合性を与えていくか、あえて郊外を想定することによって都市のも問題を考察しているところがあるのか、空想都市に自分の実家の位置を想像するとしたら?など、多くの質疑にお答え頂きました。学年や分野を超えて参加した学生からは積極的に質問が飛び交い、学生は空想都市に興味津々でした。自由な観察眼によって実際に手を動かしながら考えていき、分析・更新のサイクルを常に繰り返していく姿勢はデザインを志す学生たちにとって非常に刺激になったはずです。