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レクチャーシリーズ 第4回(2020.12.12)
鈴木啓さん(構造家)
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鈴木啓さんは1996年に東京理科大学大学院理工学研究科の修士課程を卒業し、佐々木睦朗構造計画研究所へ入社。せんだいメディアテークなど、非常に難しく、建築の歴史の中で重要な建物の構造設計を担当された。池田昌弘建築研究所で1年ほど仕事をし、2002年から鈴木啓/ASAを設立。2011年にえんぱーく(塩尻市市民交流センター)で第6回日本構造デザイン賞を受賞した。
今回のレクチャーでは、構造家とは何かという話から、実際に手掛けたプロジェクトの話をして頂き、後半は生徒からの質問に答える形で進められた。
まず構造設計とは「力学・材料・幾何学の合理性に基づき、経済的条件を考慮して行われる設計行為であり、条件を基に自然と対峙する行為である」と鈴木さんは言う。自然条件はその場所ごとに異なるため、その相手の特性を知らなければいけない。例えば、ニューヨークに高層ビルがどうして多く建ったかというと、地震がなく地盤も良いなどの自然条件が大きく寄与した。日本では地震もあり、地盤も良い所、悪い所がある。北海道では積雪が1.5メートル、東京だと30センチ、沖縄では積雪は考えなくてよいという具合に、場所ごとによって設計条件が変わるのだ。
地震と構造設計の関係についてもお話頂いた。地震というのは構造を設計する上での指標、基準を示してくれているという。関東大震災があり、この時に多くの建物が倒れた。そして新潟地震では地盤が砂のようになってしまう液状化に見舞われた。現実に危険性が確認、認識されることで、設計に反映されるようになる。1981年に現在の基準法につながる新耐震設計法というものができる。過去の地震から学びを得て、構造的な安心性、信頼性が高まるような形で設計法が確立されている。
次に建築家と構造家の関係についてお話頂いた。海外では、建築家は建築学科、美術学科などに属しているが、構造家という職業はシビルエンジニアといって、土木の分野になる。一方で日本では、建築家も構造家も建築学科に属している。建築家も構造力学を学び、構造家も意匠設計、建築法規などを学ぶ。そういう意味では、日本の場合、建築家と構造家は同じ土俵にいて、会話が通じやすく、極めて密接な関係にあると言えるとのこと。
また、建築というのは非常にたくさんの人が関わる職業であり、映画を作るように、プロジェクトごとにチームが結成され、徐々に色々な人が関わっていく。構造設計はもちろん、環境関係やテキスタイルなど、様々な分野の人と一緒に建築する。
建築設計、インテリアに関わる人が多い桑沢の学生でも、自分の関心を持ったものを追い求め、自分と建築との関わり合い方を引き続きずっと考えていき、自分にフィットする仕事を切り開いていくことが重要であると助言して頂いた。
様々な資格が必要だと学生は言うことが多いが、資格を持っていれば安泰というわけではない。どのように仕事をしていくかが大切なのだ。様々な職能からゼネコン、メーカーなどの組織まで、幅広い分野にわたっている建築を勉強し、自分に合った職業、働き方を見つけていってほしい。建築というのはそういうことができる分野であると鈴木さんは語ってくれた。