KDS-SD 桑沢デザイン研究所
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Lecture Seriesレクチャーシリーズ

夜間レクチャーシリーズ第2回 _ 加藤郁美さん

夜間レクチャーシリーズ第2回(2023年11月18日)

ゲスト:加藤郁美さん(編集者)

加藤郁美さん( https://www.gettosha.net/ )は、早稲田大学文学部哲学科を卒業後、作品社に編集者として勤務ののち独立。作品社時代の担当編集した本には、岡谷公二先生『郵便配達夫シュヴァルの理想宮』や伴田良輔先生『女の都』などがある。現在は、ひとり出版社・月兎社(ゲットシャ)で編集者として執筆を行う。主な著書として、『切手帖とピンセット』(国書刊行会)や『どうぶつ帖』(倉敷意匠計画室)、月兎社出版物としては勝本みつるさん『one day 或る日』など。

今回のレクチャーでは、加藤さん自身が編集されたお仕事の紹介から、編集を通じて出会った、タイルの世界や歴史についてレクチャーをして頂きました。

建築陶材として、建築とも繋がりがあるタイル。

佐藤卓さんが関わったの松屋銀座メトロの紹介された繊細なタイルの使い方や色彩の揺らぎを表したタイルは、現代に至るまで、長い歴史の中で様々な使われ方をしてきたタイルを象徴するものであった。タイルと言っても一つの釜の中で、どうしても釉薬や火加減の差で微妙な色の差が生まれる。タイル業界はこの色の差が出ないように、どう均一に作るかを追求してきたが、佐藤卓さんはこの色の差から生まれる揺らぎを求めていたという。また、佐藤卓さんは「タイルで彩るということは通路に入れ墨を施すようなもの」と仰っていたそうです。

タイルの前は煉瓦が主流だったが、1923年の関東大震災にて煉瓦造りの建物が半分に崩れてしまった。しかし帝国ホテルは崩れずにいたことから粘土のように絞り出しカットするスクラッチタイルが使われていき、建築材の移り変わりにもタイルの存在があったこと。和製マジョリカタイルなど、日本国内だけではなく外国向けに作られたタイルやがあることなど、タイルがどういう背景で日本の住宅や、海外にまで普及していったのかをレクチャーして頂きました。

後半の質疑応答では、加藤さんが持参した実物のタイルに触れさせて頂きました。実際に持ってみると焼き物の重みは感じるものの、どれも細かい装飾があり写真で見るより美しい色彩に、「実際に触れたい」と思うような愛着が湧くタイルばかりであった。

最後に、「建築家を志す学生には、頭の中に陶器を入れておいて、素材の一つに焼き物のタイルという選択肢を持っていてほしい」とアドバイスして頂きました。