KDS-SD 桑沢デザイン研究所
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Lecture Seriesレクチャーシリーズ

夜間レクチャーシリーズ第4回 _ 佐藤 直樹さん


夜間レクチャーシリーズ第4回(2023年12月2日)

ゲスト:佐藤直樹さん(ギャラリスト、somewheretokyo オーナー/http://www.somewheretokyo.com/ )

今回のレクチャーでは、イタリアを中心としたコンテンポラリーデザイン(ポストモダン初期から現代まで)の歴史や社会的背景をはじめ、somewheretokyoで取り扱っている現代作家さんのご紹介をレクチャーして頂きました。

80年代以降のイタリアを中心としたポストモダンデザインは、MEMPHISやSOTTSASSのような集団やデザイナーによって活動の幅を広げていき、ALCHIMIAなどに繋がっていった。それまでのデザインとの一番の違いは、メーカから依頼されるのではなく、自分達がやりたいデザインをして販売していったことである。また、その作品たちは非常にコンセプチュアルであった。

それまでのデザインに何か物足りなさを感じていた彼らは、家具だからといって空間に馴染むだけのものでなく、オブジェのようなものもあっていいのではと考えていたようである。

そのような思考の背景には、ラディカルデザイン運動という機能主義・合理主義・大量生産に対するアンチテーゼ運動などの社会的背景も大きく影響していた。それは、人とデザインはどういう関係であるべきかなどを理論的かつ哲学的議題を扱った反(アンチ)デザイン運動でもあった。

1987年にMEMPHISの活動停止、1991年にALCHIMIAの活動停止となり、ポストモダンデザインは実質的な終焉を迎えた。

その後の日本では、MEMPHISにも参加していた倉俣史郎や梅田正徳、そして内田繁など桑沢デザイン研究所に関わりの深いデザイナーたちが活躍していったこと。そして、現代ではデザイナー自身で手を動かし作るようになった作家主義的なものが広まっていることなどをレクチャーして頂いた。また、イタリアのポストモダンデザインでは、アートの世界の人ではなくデザインの世界の人が内側から革命を起こそうとしてくれたことが良かったのではないかと仰っていた。

学生からの質疑応答では、日本と外国のアートを取り巻く状況の違いに対して、「日本ではデザインや芸術など人が作るものに対して総じて評価が低く、マーケット自体もあまりに小さい。デザイン業界が自ら戦って勝ち取っていかないといけない」と仰っていた。

学生には、「当たり前とされていることや、こうだと言われていることを、そのまま受け入れずに疑問を持つことが大切だと思う」と最後にアドバイスして頂きました。