KDS-SD 桑沢デザイン研究所
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Lecture Seriesレクチャーシリーズ

夜間レクチャーシリーズ第5回 _ 中津 秀之さん

夜間レクチャーシリーズ第5回(2023年12月9日)

ゲスト:中津秀之さん(ランドスケープアーキテクト、関東学院大学准教授)

中津秀之さん( https://site-works.jp/  )は、帯広畜産大学で学んだ後、筑波大学大学院・環境科学研究科・都市環境計画専攻を修了。その後米国ハーバード大学・デザイン系大学院・ランドスケープ学科へ留学し、有名なランドスケープデザイナーのピーター・ウォーカーに師事。帰国後に、株式会社長谷工コーポレーション/ランドスケープ・デザインチームに勤務し、2000年に有限会社サイトワークス・ランドスケープ研究所の主宰として独立された。

主な受賞に、グッドデザイン賞「デュオヒルズつくばセンチュリー/つくば市竹園西広場公園」や「九曜舎」、日本建築学会関東支部神奈川支部長賞、黄金町「まち桟敷」、など。

今回のレクチャーでは、「遊び」と「石」と「境界線」という講義タイトルで、中津秀之さんご自身の体験や関わってきた作品実例をもとに、遊びや環境デザインとの関係、ランドスケープデザインの本質についてレクチャーして頂きました。

28歳から設計の道を進んだ中津秀之さんは、川越市に初めて設計した公園が、想定してなかった使われ方で子供で溢れかえるほど人気になったことをきっかけに、自身のそれまで受けてきたランドスケープデザインの教育に疑問を持ち始めたという。そして、子供に向けたランドスケープデザインに興味を持ち始めたという。

「遊び」の本質とは、「集団」ではなく「ひとり」にあるといい、子供の遊びを元に「遊び」の本質を分析的にご説明頂いた。

そして、英国の「貴族の庭Park」の開放から「公園Public -Park」、そして「遊園Play ground」への公園の歴史的変遷の話を含め、どのように公園がパブリックな場所と認識されてきたのかという国内外の簡単な歴史もレクチャーして頂いた。

子供の遊び環境では時間、空間、仲間の3つの間が大切であるという。

建築設計やランドスケープデザインは人の暮らしを改善するためのデザイン行為として、S身体スケール、Mコミュニティ・スケール、L自然・都市スケールというの3つの視点をそれぞれに持ち合わせることが大切だとおっしゃっていた。また、ベンチが発するアフォーダンスには奪い合いや競争の原理があり、その先にあるのは優越感と敗北感のみが残るとおっしゃっており、都市における場所への私的な愛着を取り戻すべきだとレクチャーして頂いた。

質疑応答では、ランドスケープをデザインする際に自然を接続する目的として捉えておらず、あくまで手段として捉えているとおっしゃっていた。

学生には「重要なことは、観察すると自動的にいいデザインが生まれるわけではないということ。そして、ポイントは観察したものの記述の方法であり、そこで何を発見し、どう設計に繋げていくかであると。最終的には、具体的に寸法を決めることが設計であり、まずは記述するために観察することが大切」とアドバイスして頂いた。