11月29日(土)に行われたレクチャーシリーズ第2回目のゲストはキュレーター、美術・音楽批評家の畠中実さん(https://www.ntticc.or.jp/ja/archive/participants/hatanaka-minoru/)でした。また本校非常勤講師の鳴川肇先生(http://www.authagraph.com/)にもお越し頂きました。
畠中さんは、1991年に多摩美術大学の芸術学科を卒業し、1996年から2025年3月までNTTインターコミュニケーション・センター(以降:ICC)で学芸課長として多数の展示会を企画しており、今回のレクチャーでは、ICC在職時の活動記録を時系列に当時の写真と共に解説して頂きました。
ICCはオープン当時から最先端のテクノロジーを使ったメディア・アート作品を主に展示しており、現在メディア・アートはメディア芸術(漫画、ゲーム、アニメ等)のカテゴリーの一つとされている。しかし畠中さんは、ジャンルを表現する言葉ではなく、むしろものの見方であることと、建築の中にもどんなものの中にもメディアは存在すると述べられました。
次に過去にICCが取り扱っていたゲームアートについて紹介していただいた。ゲームアートとは、インタラクティブアートの原点であり、バーチャルスペースにおける人間との共存をテーマに80年代の初期から存在する。近年ではビデオゲームをアートのモチーフとして取り入れられ、今でもなお探求されている分野である。ゲームはオルタナティブな人生を一時的に経験する機会を提供するが、同時に「消え去らないもの(現実)」を直面させるものでもある。ただ消えない現実をどう生きるかシミレーションできるのもゲームであると畠中さんは語ります。
3つ目にコロナ禍以降のメディア・アートの在り方について。コロナ禍の外出自粛の期間、展覧会が次々に中止となる状況が続く中、展示空間を3Dスキャン(Matterport)したものをオンラインで再現し、閲覧者は隅々まで空間を見渡すことが出来たそうです。これこそ最高のアーカイブであると畠中さんは語り、これまでの展覧会アーカイブは記録写真でしか保存されておらず、空間そのものの記録を残せた新しい方法になったと仰っていました。コロナ禍が終わり、舞台やコンサートといった「生」を大事にする分野のオンライン、バーチャル化は衰退したものの、展覧会空間は、フィジカルな空間だけではなくバーチャルな空間にも拡張しているとのことです。
また後半の円座になっての学生との質疑応答では、今の学生はメディアアートをどのように感じているか、AIのこれから、世代による物の所有欲について、など世代間で異なる感性を共有し、学生と先生方、お互い新たな気付きとなった。
最後にこれからのメディアアートの流行りについて質問をしたところ、畠中さんは今の作品を評価することが一番難しいと語り、過去のものは歴史を辿ることで判断はできるものの、現代の作品がこの先どう変わっていくのか誰も予想できないとのことでした。







