KDS-SD 桑沢デザイン研究所
スペースデザイン

Spotlight注目の授業

レクチャーシリーズ第6回目は、建築家の神本豊秋さん

昨年度も6回に渡り夜間レクチャーシリーズが開催されました。このレクチャーシリーズでは、毎年様々な分野で活躍されているゲストをお呼びして、前半にゲストによるレクチャー、後半はゲストを囲んでの座談会を行っております。

1月11日(土)18時から行われた今年度最後のゲストは、建築家で再生建築研究所の代表を務める神本豊秋さん(https://saiseikenchiku.co.jp/)でした。前半は建築業界の現状のお話として、古い建築物が価値を失い、どんどんと取り壊され新築が建てられるという日本独特の構造が問題視されていること、それらの問題に対して再生建築研究所での取り組みについてお話しいただきました。

壊す建築文化から残す建築文化へ
日本の建築物の検査済証取得率は約20%にとどまっており、残りの80%は検査済証がなく、これが建築物の信用問題を引き起こしています。再生建築研究所では、この80%の建物を適法にし、検査済証を取得することで、建物の価値を保つ取り組みをされています。

再生建築研究所の代表的なプロジェクトとして、ミナガワビレッジがあり、ここでは4棟の違法建築群が60年ぶりに検査済証を取得し、長期融資が可能となりました。このプロジェクトでは、建物の履歴を読み解く考古学的アプローチを用いて設計が行われ、既存の建物1棟を残し、2棟を新築して、既存建物の補強を行う再生建築が実現されたそうです。

従来のリノベーションとはまた違ったアプローチの再生建築という分野についてとても深くお話しいただき、学生達も壊すことよりも残すこと、そして、ただ新しいものを作るのではなく、過去の価値をどう引き継ぎ、発展させるかを考えてみる良い機会となったのではないかと思います。

神本 豊秋/Toyoaki Kamimoto/1981年大分県生まれ。近畿大学九州工学部を卒業し、8年間青木茂建築工房に勤務。2012年神本豊秋建築設計事務所を設立。同年より東京大学生産技術研究特任研究員(川添研究室)として、約100年ぶりの東京大学総合図書館の再生に従事。再生建築の研究を行う。2015年に株式会社再生建築研究所を設立。2018年より、ミナガワビレッジに入居・運営開始。2022年12月より、文部科学省 学校施設整備・活用のための共創プラットフォーム「CO-SHA」アドバイザー就任。