KDS-SD 桑沢デザイン研究所
スペースデザイン

Lecture Seriesレクチャーシリーズ

レクチャーシリーズ第1回は、栗原徹さん(TEKU・TEKU)をお招きしました

栗原さんの所属するTEKU・TEKUまち歩き活動体は、その名の通り、日本中の街を観察しながら歩き、道中で見つけた面白いものや状況を発見しては、その魅力を土地の立地、地形、歴史等とともに調査する活動を続けている。

毎回まち歩きの際には、参加者が歩いた街をA〜Dで評価し、結果を発表することもこの活動の大きな特徴である。この活動は1990年から歩き始めて来年で30年を迎え、誰でも参加可能である。

今回のレクチャーでは、今まで歩いてきたユニークな街の実例紹介、街を魅力的にするための計画論、それらがどう街づくりに繋がっていくのかをお話して頂いた。

具体例として、今まで歩いてきた街の中から、「ラビリンスの街」(下北沢)、「歴史的な街並み」(川越)、「界隈性のある街」(三ノ輪、三河島)、「計画された街」(国立学園都市)が紹介され、街の見方を説明して頂いた。

「ラビリンスの街」というキーワードはTEKUTEKUが独自に生み出したもので、街に自然に生まれた個性が複雑な路地と合わさり、迷路性が高くなった街のことを差す。代表例として下北沢駅周辺が挙げられ、駅前の迷路のような路地、北沢ビルやスズナリ横丁などの時代を感じる建物、またそこに集まる人達も個性豊かであることから、歩いているとどこかに迷い込んでしまった気持ちを感じさせるという。下北沢はサブカルチャーの印象が強いが、街自体の地形のあり方も“下北らしさ“を生み出していることが調査から分かっていくという。

2000年に100回歩いたことの総括評価として開催した、「どの街が一番魅力的か?」アンケートでは、吉祥寺駅が第1位に選ばれたそうです。大きな理由として、吉祥寺駅自体が、近年大型商業施設を駅から遠ざけて設けるなど、ヒューマンスケールの駅前広場を心掛け、面的に広がる歩行者空間が他とは違う賑わいを生んでいるからだという。

今回の講義で「ヒューマンスケール」と言う言葉を何回も耳にした。人間が建物に合わせて生活するのではなく、建物が人間に合わせて人間主体の街をつくることが魅力的な街づくりにつながるのではないかと感じた。

レクチャー後の後半は、学生と「渋谷」をテーマにディスカッションが行われた。現在再開発が進む中で、どんどんと街の「表(の顔)」と「裏(の顔)」がなくなり、どこも綺麗になってゆく渋谷の街に寂しさを感じる人がいる一方、新しくなることをもっとポジティブに捉えたいという学生との議論が繰り広げられました。このまま再開発が進んでも「裏」がなくなることはなく、「裏」が消されていき、最後に残ったものがどれだけ渋谷を魅力的にするのか?と言う栗原さんの言葉で講義は終わりを迎えました。

次回のレクチャーシリーズ第2回目(11月16日)は、ランドスケープデザイナーの石川初さんです。

慶応義塾大学SFC 石川初研究室 http://hajimelab.net/wp/

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