KDS-SD 桑沢デザイン研究所
スペースデザイン

Lecture Seriesレクチャーシリーズ

レクチャーシリーズ第1回のゲストは建築家の木村浩之氏でした

木村浩之氏(まちむらスタジオ主宰)は昨年までの約20年間、スイス・バーゼルの建築設計事務所(Diener & Diener Architekten)でお仕事をされていました。

レクチャーでは、スイスでの生活や経験を通して感じた事、日本との違い、またそれに関する考察などを交えながら、スイスにおける建築の在り方、設計する際に気をつけていたことなどをお話して頂きました。

「スイス・バーゼルからのレポート」と題された今回のレクチャーはまず、スイスについて知る事から始まるということで、冒頭において、日本でも馴染みのあるNestle(ネスレ)や「アルプスの少女ハイジ」の舞台など、キャッチーで分かりやすい話から始まり、最終的には建築に関する法律の話までして頂きました。

スイス・バーゼルでは市民が建築計画などに積極的に関わり、国や建築家だけでなく街全体で建築や都市を作っている。一般市民が建築計画について意見する事ができる「市民団体提訴権」や、それについて賛成反対を直接投票できる「市民投票権」などを利用する事で、建築計画や都市計画などを時には廃案にすることができる。一方で、市民自らが考えた都市計画案を議会で議論し実現することもあるほど、市民が都市の景観、建築物に対して敏感であるため、建築家が建築を計画する際にも、こういった状況をかなり意識しなければならない。
スイスでは、「人・もの・空間」の関係と「シチズン・マインド(市民であることの自覚)」とが掛け合わさる事で、好ましい建築や都市をつくっているのではないかと締めくくった。

後半の座談会では、スイスを始めとしたヨーロッパ諸国と日本との、建築や街への考え方の違いや、建築業界の違いについての意見交換が多く行われた。
近年スイスから著名な建築家が多く輩出されることについての質問には、国が若手建築家のサポートを積極的に行なっていることや、建築と都市の両方に関わり様々な決定権を持つシティ・アーキテクチャー(建築主事)が建築や都市計画を出来るだけコンペにし、競わせることで、若手建築家を育てていくという環境が要因ではないかという考察を語った。
また、木村氏が住んでいたバーゼルでは、(建築家を含めた)市民の“地元愛”が強く、そのことがよい建築を生み出し、そしてよい街を形づくっているのではないか、と語ってくれた。

*次回11月24日(土)の講演者は、グラフィックデザイナー、ファッション史家の長澤均(オンライン古書店mondo modern(モンド・モダーン)運営者)さんです。