11月25日(土)に行われたレクチャーシリーズ第1回目のゲストはデザイナーの狩野佑真さん(studioNOU https://yumakano.com/studio/?lang=jp)でした。
狩野さんは2011年東京造形大学の室内建築専攻を卒業後、アーティストの鈴木康広氏のアシスタントを1年務め、翌年2012年にデザインスタジオ「NOU」を設立。ネジ(Screw:) project)のような小さなプロダクトデザインから、インスタレーションや店舗設計まで、”デザイナー”という肩書きでは収まらないような、さまざまな造形を生み出しています。
今回のレクチャーでは「錆を育て、枝を拾い、うんちを焼く。これもデザイン?」をコンセプトに、独立後からの主な作品紹介と、その作品の主な作成手段やどのようにして生まれたかなど、実物を披露しながら制作秘話を聞かせて頂きました。

「錆を育てる(Rust harvest)」
以前の作業場であった造船場で、よく目にする錆をモチーフにプロダクトができないかと思いついたことから始まったプロジェクト。これは金属板を放置(海水に漬ける→雨ざらしにしておく→土に埋めるなど)し、錆を生成した後、アクリル板に錆のみ転写した板を家具やプロダクトに落とし込んだ作品。狩野さん曰く野菜作りのように、こまめに金属板をお世話をすることが大事とのことで、大型の依頼を受けた際でも、錆づくりから転写まで一つひとつ手作業で行っているという。これまでの人類の歴史上、錆は死を連想させるため、どうしてもネガティヴなイメージを持たれがちであった。それが今回、錆であること忘れてしまいそうなほど綺麗な模様を使ったテクスチャーを生み出すことで、錆本来の可能性を広げられたという。



「枝を拾う(Forest Bank)」
国産材を活用する為のプロジェクトで訪れた飛騨の森が美しかったことから、森の豊かさをマテリアルにできないかと制作された作品。森に落ちている枝葉、樹皮、実、土などを水性アクリル樹脂で固めたものを切り出したもので、その断面は、枝や樹皮の本来見えない複雑な形が現れ、家具やプロダクト、インテリアのマテリアルとして使われている。特定の地域(街路樹、公園)で剪定された端材を用いることで、その地ならではのストーリーが生まれると同時に、排出されるゴミの量も減らせるとのことで、これまでForest Bankで作り上げてきた総量は12トンにもなるという。現在BAUMの伊勢丹新宿店と阪急梅田店の内装と什器で実際に使われている。



「うんちを焼く(Poop to Tile Project/下水汚泥タイルプロジェクト)」
2024年に21_21DESIGN SIGHTギャラリー1&2で行われた「ゴミうんち展」に出展したうんち(循環)をテーマにデザインした作品。トイレに流されたものは下水処理場に流れ、一般的には川や海に放流されるがどうしても最後に汚泥が残ってしまう。焼却され汚泥灰として肥料やセメントなどに使われているが、汚泥灰の素材が焼きものと相性がいいのではと思い、LIXILやきもの工房の協力のもとタイル制作を行なったという。「うんち」が実際に空間の一部として存在することの可能性をデザインできたと述べ、いつか一般的なタイルと同様にうんちタイルも内装材として使ってもらいたいと語った。



近年、狩野さんは素材に目を向けたアプローチをしており、それはRust harvestを境に目の前で起きた現象を自分の手で調整して作り上げていく作業が自分には合っていると感じたそうで、そもそも昔からPCソフトの操作やCADでの作図作業が苦手でコンプレックスだったが、それらが使えないことを自分の強みだと発想を転換したらすごく可能性が広がり、Forest BankやPoop to Tile Projectにもつながったとのこと。





