KDS-SD 桑沢デザイン研究所
スペースデザイン

Spotlight注目の授業

レクチャーシリーズ第5回はグラフィックデザイナーの田中義久さん

12月21日(土)18時から行われた今年度5回目のゲストは、グラフィックデザイナーの田中義久さんでした。

田中さんは、現在のお仕事に至るまで、異分野の様々なお仕事を経験してきたそうです。その中でも、昔から紙に対する特別な関心があったそうで、その強い思いが、デザイナーとしてのこれまでの仕事に繋がっているそうです。また、長年にわたって特定のクライアントと密接に仕事を行う機会があり、例えば、恵比寿のPOST(本屋)など、独自のコンセプトで運営される店舗と関わり、アートやデザインの方向性を提案してきました。POSTでは、日本で販売されていない海外アートブックの取り扱いを開始。これに対して、田中さんは毎回選定した本の紹介文(ブロッシャー)を事前に顧客に送るという方法を用いて2ヶ月おきに仕入れた本の特徴、出版社の売り出し方など多角的に考え、グラフィックを製作してきたそうです。

また、アートディレクターとしても活躍し、TABF(東京アートブックフェア)のアートディレクターを務めるなど、国内外でのアートブックシーンの活性化に貢献しています。

田中さんは、ギャラリーやミュージアムショップの空間デザインも携わっており、例えば、GALLERY 5(オペラシティのミュージアムショップ)では、ショップの展示空間を改装し、ショップを「もうひとつの展示室に」というコンセプトに合わせて文字の段落ちのデザインを取り入れるなど、空間の変化を表現するデザインを追求されたそうです。

2018年に行われたタケオペーパーショウでは、昨今のネット社会で紙の需要がますます減ってくなか、「今後どのような紙が残っていくべきか、必要とされるか」という視点で企業と共同作業されたそうです。その他、紙自体に磁力を与えた実験プロジェクトや、シューズメーカーのニューバランスとの共同企画では使用済みの紙から新しい靴を紙で制作するプロジェクトを行っています。また、ISSEY MIYAKEのプロジェクトでは、和紙を使って巨大なプリーツを製作し、ショーの会場構成をするなど、お仕事の範囲は圧倒されるほど多彩かつ膨大でした。

田中さんはグラフィックデザイナーという肩書きでありながら、ファッションや空間デザインなど他分野とクロスオーバーする様々なお仕事をされており、桑沢デザイン研究所が掲げるデザインの分野や垣根を越えた「総合デザイン」に通じるお話しが多く、大変貴重な時間を過ごせたことと思います。