KDS-SD 桑沢デザイン研究所
スペースデザインコース

Spotlight注目の授業

レクチャーシリーズ第2回は、石川初さん(ランドスケープデザイナー)をお招きしました

石川初さんは鹿島建設で数々のランドスケープデザインの実務を経た後、2015年4月から慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)で教授をしている。

今回のレクチャーは三部構成で、最初に鹿島建設時代の実務プロジェクトをたくさん紹介して頂き、ランドスケープデザインを実現することの難しさや楽しさを色々とお話し頂いた。

次に、鹿島建設を退社した後に、ご自身が独自に行った数々の研究プロジェクトをご紹介頂いた。例えば、「Tokyo used to be canal project」という石川さんが想像する東京の水辺に着目した都市のランドスケープデザイン。海面上昇がこのまま進むと、これから何十年かの間に東京の街のほとんどが水面下に沈んでしまう。浸水が食い止められ、強度のある場所を検討したところ、実は河川の中(堤防の中)が一番安全だということが分かった。そこで、石川さんは河川内部に建物やインフラを埋め込み、現在の河川の上に新しい都市を作るという大胆なアイディアを考えた。今までとは逆に、河川の外に水辺(浸水した都市)が広がることで「究極の洪水/高潮対策」「温暖化による海面上昇への対策」「ヒートアイランド現象の緩和」など他にもたくさん地球にプラスになる点が挙げられた。

ご紹介頂いた数々のプロジェクトは、極端な提案で一見非現実的に見えるエクストリーム(極端)な都市のランドスケープではあるが、緻密なデータ収集から、それをスケープ(風景)として視覚化するプロセスまでを非常に論理的に行うことで、視覚化された風景は迫力のある絵であるだけでなく、説得力を伴った可能的近未来の風景となっていた。

最後にご紹介頂いたのは、SFCの石川初研究室での学生プロジェクト。例えば、「SFCのキャンパス自体を日本の伝統的な手法(山水画、日本史画、江戸切絵図など)で描くとどんな風景に変わるか?」、「馬が主要交通機関になった都市の将来像とは?」、「向日葵レース(学生達が好きな場所に向日葵の種を埋め、一番早く花を咲かせた学生が勝ち)」などユーモアに富んだものが多く、実務では想像もしないような楽しくも何か現代社会に批評的なプロジェクトが多く見られた。

2016年からは徳島県神山町にフィールドワークで訪れ、学生達と神山町を歩き、現地の人々と話すことで発見したものを図鑑(「神山暮らしの風景図鑑」)や絵本(「かみやまでいきること これまでの千年これから千年」)にまとめている。また、出来上がったものを地元に配布することで街の活性化にも役立っている。神山町の建築物や風景をレゴブロックで表現した「レゴで作ろう神山の風景」はイタリアのヴェネチア建築ビエンナーレで展示されたという。

石川さんは、「当たり前のように考えていることを一度忘れる」、「全く違う〇〇だと思ってみる」、「全く違うスケールで物事を見てみる」などを常に心掛けていると言い、それが数々のプロジェクトからも垣間見れた。また、必要なのは“探求心”で、目的地にダイレクトに行くのではなく、目的地以外で出会ったものが自分のボキャブラリーを増やすきっかけになると石川さんは言う。驚きを楽しめるようになる好奇心を持つことが大切だと痛感した。

最後に石川さんから桑沢の学生へアドバイスを頂いた。

「どんな些細なことでも今やっていることを10年続けてみる。そのデータを10年貯めて振り返ると、10年前に見えなかった、想像もしていなかった世界が続いている。」と言う。石川さんは18年間毎日GPSを持ち歩いているそうで、こんなに四六時中GPSを持ち歩いている人は世界中に自分しかいない(=世界で1番)だと仰っていた。最近は自分が続けているのを見た周りの人もGPSを持ち歩くようになったというが、最初に始めた人しか一番にはなり得ないという。

それは、極プライベートで”何でもない”情報を延々と長きに渡って記録しデータ化し続けることで、それが何か“特別な”情報に変わっていくことを意味している。

石川さんのように“何かを毎日記録し続ける”こと、つまり「My Private Big Data」を我々も今日からつくり始めることがその第一歩になるのではないか。

次回のレクチャーシリーズ第3回目(11月30日)は、イラストレーター/小杉湯 番頭の塩谷歩波さんです。お楽しみに!