KDS-SD 桑沢デザイン研究所
スペースデザイン

Spotlight注目の授業

レクチャーシリーズ第2回目は、キュレーターの内田まほろさん

今年度も6回に渡り夜間レクチャーシリーズが開催されます。このレクチャーシリーズでは、毎年様々な分野で活躍されているゲストをお呼びして、前半にゲストによるレクチャー、後半はゲストを囲んでの座談会を行っております。

11月30日(土)18時から行われた今年度2回目のゲストは、キュレーターの内田まほろさんでした。

当日は、内田さんと現在仕事を一緒にされている建築家で本校非常勤講師の押尾章治先生、そして以前に科学未来館でお仕事を一緒にされていた建築家で本校非常勤講師の鳴川肇先生も一緒にも参加して頂き、進行中のプロジェクトのお話などもしていただきました。また、以前このレクチャーシリーズで登壇して頂いたロボットデザイナーの松井龍哉氏(フラワーロボティクス代表)も参加して頂き、大変密度の濃いお話が繰り広げられました。

前半のレクチャーの中では、以前在籍されていた科学未来館における、アートや音楽を組み合わせる実験的な企画展についてのお話がありました。科学だけにとどまらず、宗教や恋愛、漫画といった一見遠いテーマと掛け合わせることで、来館者に新しい発見と驚きを提供するとのことです。これは、既存の枠組みにとらわれず、発想を広げるアイデアとして、とても刺激的でした。

また、鉄道の中でファッションショーや演劇を行うような新しい展示例も紹介され、移動空間そのものが創造的な文化の場になるという視点は、学生たちにとっても新たな発見となったかと思います。

様々なお話の中で特に印象的だったのは、展示物の完成形ではなく、その制作過程や背景を「ナラティブ(物語)」として魅せるという考え方です。ものが生まれる過程や、それに込められた思いを伝えることで、一つの展示物を超えた「共感」を生むとのこと。

常設展を設けないミュージアムの考え方、価値創造についてキュレーターというご職業ならではのご意見を伺うことができ、学生たちにとって非常に勉強になったことと思います。常に変化し続ける空間やアクティビティが、「ミュージアムに行く」という行為そのものを新しいものに変えるのだと感じました。

内田まほろ/現キュレーター、JR東日本文化創造財団 元日本科学未来館 展示企画開発課長 キュレーター。アート、テクノロジー、デザインの融合領域を専門として2002年より勤務。2005年〜2006年から文化庁在外研修員として、米ニューヨーク近代美術館(MoMA)に勤務。企画展キュレーションとして「時間旅行展」「恋愛物語展」「THE 世界一展」「チームラボ」など多数。シンボル展示「ジオ・コスモス」のプロデュースでは、ビョークやジェフミルズとのコラボレーション企画を手がけるなど、大胆なアート&サイエンスのプロジェクトを推進している。慶応義塾大学大学院、政策メディア研究科修士。チューリッヒ芸術大学、舞台・展示空間学(セノグラフィー)修士。